保育士さんの「本当の望み」とは
ここでは、園から離職しようとする先生の声を1つ取り上げます。
ある日、保育士歴4年目の先生とお話する機会があり、こんな声を聞きました。
「毎日何をしているのか わからなくなる」
日々いろいろと考えた上で出てきた言葉だなと思います。
私は保育専門学校でもアートプログラムの講師を勤めさせていただいております。10代~50代まで幅広い年齢の学生さんがいらっしゃいますが、皆さんレポート提出に頭を抱えながらも、「保育士になりたい!」という夢を持って学んでいるのは確かです。
それが現場に出ると、本人が思っていたのとは違うのが現実です。
どの業界にも さまざまな職場環境がありますし、本人の意思や適応能力なども関係してくるので、どんな仕事でも嫌になる理由はあります。だから保育業界だけに問題があるとは言えません。
ですが、先生の話をさらに聞いてみると…
- 危険防止の理由から、やってはいけないことがたくさんある。
- 自分なりの努力をしたが、上の先生との意思疎通がうまくいかない。
- 決められた業務をこなしているだけで、子どものお世話係としか思えなくなってきた。
とのことで
「今の職場は合っていないわけではないけど、そろそろ転職を考えている。」
「このまま保育士の仕事をしていても先が見えないから、いずれは独立しようと考えている。」
という考えに至っていました。
そこで私なりに、なんだかおかしなことになっているなと感じた点です。
保育士の先生が独立開業されているケースが私の周りには多く、SNSを見ていても、先生の活躍の場は園の中だけではないことがわかります。これはこれでありな時代です。
しかし、自分が目指す保育や教育のかたちを突き詰めていこうとする先生たちが続々園を離れていってしまうと、園としては損失だなと心配してしまいました。
そして先生たちにとっても、理由は様々にあるのだと思いますが、園は子どもと日々関わりを持ちながら実践経験を積んでいける場ですし、数多くの子どものデータ分析もできるわけですから、園という現場を離れるのは、ある意味もったいないと思うのです。
業務負担軽減、待遇改善など、業界の課題はクリアされていっているように見えます。
が、保育士の資格を活かして独立する先生が多いところを見ると、先生たちの望みは一体何でしょうか?
そういった先生たちは保育士という仕事の中に「やり甲斐」「やりたいことの実現」を求めているように思います。
先生同士で協力しながら「望み」を叶える
ところで、ベテラン先生のこんな声もありました。

私が30年以上前に保育を学んだ時とは、子どもの姿も、保育や子どもにとっての環境も大きく変化しています。私も進化し変革しなければ、子どもとも若い職員や保護者の方とも関わっていく資格がないと思っています。
はじめに取り上げました先生の声の一方で、これまでの自身の価値観を変え、若い先生と共に進もうとするベテラン先生もいらっしゃいます。
こうして世代を問わず、先生たちの思うトコロを話し合う機会は、何かしらの解決の手がかりになるのではないでしょうか。

仕事のやりにくさ
離職を考える理由
日々の日課に追われてしまう理由
子どもとの関わり方がわからない…
こうした問題はひとりで抱えるべきではなく、それを解決する手がかりがコミュニケーションです。
遊びをツールとして 「望み」への一歩を
職場環境の課題というのは様々な要因がありますし、短期間でそう簡単に改善できるとは思いません。
ですが、先生たちがコミュニケーションする努力は必ず環境を変えていきます。あとは進み方さえわかれば、園内で実現できることの可能性は一気に広がります。
しかもそれが、保育の中で最も子どもたちの学びに関わる“遊び”を使ってできるのなら、先生たちも楽しいですし、やり甲斐を感じられるのではないでしょうか。
保育士という仕事の特権は、子どもとの関わりを楽しむことだと思うので、それを見失ってしまってはやはり先生たちも悩んでしまい当然です。
私達が提案する遊びと研修が、先生たちの「仕事が楽しい」「子ども達と関わるのが楽しい」「今の職場でやりたいことを実現したい」と思う1つのきっかけとなり、手がかりとなることを目指したいと思います。