多機能型重症児デイサービス titta (茨城県) 保育士/おもちゃインストラクター 百戸 由佳 先生– modo yuka –

6月開催のそざい探究会にご参加いただいた後、度々実践の様子を教えてくださった百戸(もど)先生。今回、zoomで改めて取材をさせていただき、支援が必要な子どもたちと、普段どのようにそざい探究あそびを実践しておられるのかをお聞きしました。ぜひ最後まで読んでいただけますと嬉しいです。

取材日:7月某日

普段の活動について

百戸先生が働くtittaさんは、現在0~21歳の方が利用されています。tittaさんを利用している方の多くは医療的ケアが必要であるため、年齢やケアにより生活リズムや活動内容も異なるそうです。

遊びは、10:30〜昼食前までの時間帯に自由遊びも含めて行っているとのこと。午後は、個々に応じた活動の時間になります。一人ひとりに適したケアを行う看護師さんも在籍しており、遊びの中でのスタッフの皆さんとのエピソードもいくつか教えていただきました。

今回シェアするあそびは…

色水&氷あそび

この遊びは何回ほど取り組まれましたか?

6月のそざい探究会に参加してすぐに、色水遊びに取り組み始め、それから数回に渡り、私やスタッフがひらめいた楽しみ方を試していきました。

対象年齢は?

2歳になった子から、高校生くらいの子どもたちと。自由に動き回れる子の他に、バギーに乗っていたり横になっている子もいて、看護師さんや私が補助しながら活動しています。

子どもたちの反応はどうでしたか?

先月から通い始めた子どもたちもおり、まだ普段の活動に慣れていない面もありますが、氷遊びではこんな姿がありました。

サランラップに色を塗って光をかざしていたところに、さらに氷のかたまりをのせて照らすと、ピンクやグリーンの美しい光との出会いがありました。眩しく輝く氷を見て、感触遊びが苦手な子も、触れて遊んでいました!

自分から気になるものに手をのばすことができる子は、積極的に手を出し氷に触れ、何度も鼻を氷に近づけてスンスンと吸い、冷気を感じ取っていました。

グリーンの氷にそっと手が触れています。

言葉で表現できない子は、氷の光を消すと不満そうな声を出して、光を点けるとまたじっと見つめ…と繰り返す姿があって、その子にとって“好き”な遊びなのかなと感じました。

ベッドやバギーなど、みんなそれぞれの姿勢で遊びに参加する様子

遊びを取り入れてみて、課題と感じたことを教えてください。

自分の手で思うように素材に触れることができない、言葉で伝えることができない、そういった子どもたちが多いのですが、子どもたちそれぞれに感じていることや、楽しめていることは、どんなことなんだろうかと気になりますし、私たちが提供する遊びは本当にこれでいいのだろうかと、いつも考え続けています。他にも遊びを行うにあたって課題になることと言えば、横になっている子やバギーに乗っている子もいますので、目線がそれぞれに異なり、遊ぶ時にはそれぞれに合う伝え方の工夫が必要になります。

先生自身が楽しかった、よかった、と感じたことはありますか?

ある日、バギーにのった子どもと、色水遊びに挑戦しました。ボトルの透明の水を、色水に変化させる過程を、その子の目線に合わせて見てもらうと、体の力がふっと抜けたように“ニコーッ”と表情が変わったのです。この時、他のスタッフと「今笑ったよね?!」なんて言いながら、とても嬉しい気持ちになりました。 私たちが楽しんでいる雰囲気を子どもが感じ取ってくれたのか、その子自身もリラックスして遊びに参加できたのか、それとも色水へと変化する様子が面白かったのか…とにかく、遊びの中で子どものこんな瞬間が見られたことに驚きました。

別の日には、どのようにしたら寝転んでいる子どもたちが氷の遊びに参加できるのかを、看護師さんが一緒に考えてくれました。そこで、透明の空き容器や皿に氷をのせて、底部分から覗くように氷を観察するのはどうかと、試してくれたのです。

今後はどんなふうに遊びを展開していきたいですか?子どもたちとやりたいこと、施設でやりたいことかはありますか?

私はよく、タブレット画面やスクリーンを使います。みんな姿勢が異なるので、それぞれの目線で見てもらえるように工夫が必要になるからです。遊ぶ中で思いついたのですが、氷や色水を映して、素材の変化を観察するのも面白いのではと。ケアの時間が必要だったりもするここでは、みんなが一斉に活動をスタートして、最後まで一緒に活動を終えることが難しいこともあるので、内容によっては造形活動がハードルが高かったりもします。そんな時、画面やスクリーン越しに素材の実験や観察遊びを楽しむのも、先生とコミュニケーションを取ることができて楽しめそうだと思いました。

“感じる”体験を大切にしたい

遊びの中では、大人が楽しむ姿を見せて、言葉にしたり、雰囲気をつくることは、子どもだけでなくスタッフのみんなにも前向きな影響を与えると気づきました。 日々遊びを実践する中で、スタッフのみんなが一緒に試行錯誤したり楽しんでくれる姿もあったので、今後はよりみんなと共に遊びをつくっていけたらと思っています。

それから、ここでは子ども自身が手を動かしてかたちにするものは難しいのですが、私自身は何かをつくることを目的とするよりも、遊びの体験を通して、それぞれの子どもが感じていることを私自身が発見していきたいと思います。みんなそれぞれの“嬉しい・楽しい・ワクワク”や、きっと“私(僕)はあまりこの感触や遊びは好きじゃない”という想いもあるはずです。遊びの中で子どもたちにさまざまな“感じる”が芽生えてくることを、子どもたち、そしてスタッフのみんなと一緒に楽しんでいきたいです。