今月の実践テーマは「身近な道具」ということで、少しハードルを上げた12月の研修。
子どもたちとの実践を行うにあたり先生方で議論してくださったことがあったり、やってみて気づいたことなど、今年最後に定期研修の成果が目に見えるものになったと言いますか、ステキなエピソードがありましたので、私自身の記録としてもここに書き留めておきます。
目次
⚫︎実践のポイント
空間、道具、素材
⚫︎子どもの姿
⚫︎実践後の振り返り
ハサミの使用についての議論
⚫︎10ヶ月の定期研修を振り返る
もっと力を抜いていい
まずはこの実践のポイントについてです。
ごんべいの里保育園様では縦割り保育を行なっています。そのため、異年齢混合で活動することも多くあります。
【空間】
1つのお部屋で0,1歳、2~4歳が自由なペースで遊べるよう、机を3か所に設置しました。
画像のように年齢毎に分けて、ちょっとずつ異なる道具を用意。
3歳児〜の机はハサミなどを使うので、安全面にも配慮しやや奥の方に設置。
先生が見守れる範囲の人数を受け入れる椅子数にしました。
【使った道具】
0,1歳児 カラーのり
2歳児 クレヨン、でんぷんのり、一部の子ハサミ
3歳児~ハサミ、穴あけパンチ、スティックのり
⚫︎先生のサポート
年齢や発達に応じて、使ってみる、使いこなす、見守りが必要な時は手助けするというサポートを行なっていました。
【使った素材】
アルテコローレでもよく使う自由遊び用の端材ですが、切る、貼るだけの作業的な工程にならないよう、素材そのものの面白さに目を向けられるものを用意しました。
種類が豊富で、選ぶ楽しさもあります。
⚫︎先生のサポート
素材の色、かたち、手触りを先生自身も発見し、子どもに伝えたりしながら一緒に楽しんでくださっていました。
子ども自身が素材の特徴を見つけ、ふ〜っと息を吹きかけ飛ばしたり、ビリビリ破く、まるめる、集める…といった姿を見て、「こんな楽しみ方もあるのか」と、先生が気づく場面もありましたよ。
【子どもの姿】
子どものペースで道具や素材をのびのびと楽しむ時間だったので、それぞれがやりたいことに向かい、始めての道具を試す経験もできていました。
触れることが少しこわかった子も、この日は積極的になれていたり、
道具を使わせてみたらいつも使っているかのようにできた姿もありました。
子ども同士のコミュニケーションが弾み、先生方もゆったりとした時間を一緒に楽しんでいただけたようです。
先生のボールペンで字を書く子がいて、何を書いたのか聞いてみると…
「なんとか やくに たった」(笑)。
みんなで爆笑しました^^
【実践後の振り返り】
今回の実践の数日前に、先生方が議論してくださった課題がありました。
それはハサミの使用について。
0,1,2歳児さんが中心の園様(5歳児さんまで在園)ですから、日常的にハサミを使うことはあまりしていないと思いましたが、だからこそ今回は“子どもができることのレベルを、先生が知る”機会にしたいと考えました。
ハサミを使うにあたり、話し合いの中では先生それぞれの“不安”があったと思います。
指導方法がわからない、怪我したらどうしよう…
やったことがないし…
そこで先生方が気づいたくださったのは、
“やったことがない=不安” に繋がっているということ!
だから、“まずはやってみよう” と今回の実践が実現したのです。
実践にあたっては、まずは先生の不安を取り除けるよう、実施体制をしっかり考えてくださいました。
そして研修担当の先生からはこんな言葉がありました。
- 子どもたちがそれぞれの机で落ち着いて遊び込めていたし、ハサミのコーナーに子どもが殺到することもなかった。
- ハサミを指導していない子も、日常で使っているかのように使えていて、子どもができることを新たに知った。
これは、年齢や発達に合わせ机ごとに素材や道具を変えていたことが、子どもたちがその場で自分の遊びに集中できたからです。
また、先生もおっしゃっていたように、春からの子どもたちの成長も大きく関係していると思います。
【10ヶ月の定期研修を振り返る】
ごんべいの里保育園様での毎月の定期研修は、この12月で10ヶ月目となりました。
担当の先生方とこれまでを振り返ると、先生方はすごくすごく真面目に取り組んできてくださいました。
⚫︎先生が自主的に始めた記録作成
事前の計画書と併せて、実践研修後のレポート、その後も園で引き続き遊びを実施していってくださった様子をまとめたものまで揃っています。
先生が自主的に始められて「作成の仕方は手探りで、まだまだ決まったフォーマットがあるわけではない」と言いますが、手探りしながらどんどん改良していこうとされていることが、素晴らしいと思います!!
このファイルは先生全員が見ることになっているそうですが、今回のハサミの議論があったことから、もっと先生みんなの考えや想いを知りたいと思ったそう。
そこで、このファイルも見てもらうだけではなく、もっと先生みんなを巻き込んで効果的に活用していこうという結論になりました。詳しいやり方はここには書きませんが、先生それぞれの視点から記録作成ができますし、先生個人の記録ではなく“ごんべいの里保育園様の記録”になりますよね。
⚫︎「まぁいいか」ができるようになった
それから、これまで日課に追われていた感があったけれど、徐々に「まぁ少しくらいはいいか」と融通をきかせられるようになったとのこと。
遊びは1時間、11時には終わり昼食となりますが、遊びに向かい始めるペースが遅い子もいますし、ガッツリまだまだ遊びたい子もいて。
それならお腹が空くまで待っていようと思えるようになったそうです。
大人が決めた日課のために、子どもの気持ちを曲げて泣かしてまで昼食を食べさせる必要はあるのかな…それは子どもも先生も、ストレスを感じる状況になってしまう。
真面目に子どもと向き合う先生にとって大きな悩みだったと思いますが、これもやってみたら小さな問題だったと今では思えるのではないでしょうか。
だって周りがゴハンを食べてたら、そのうちそろそろ食べようかなとお腹を空かしてくる子がほとんどですから。
他にも
子どもに遊びを提案するタイミングがわからない、
他の先生をどう巻き込むと良いのか…
という、担当の先生ならではのお悩みがあったのですが
これまでの実践の様子を見せていただいて、問題点と感じるところはぜ〜んぜん!ありませんでした!
先生は、常に試行錯誤してていい
と、私は考えています。
むしろ試行錯誤を続ける気持ちがないと、子どもたちとの遊びなんて真剣な想いでやってられません。
子どもたちと、先生みんなと「もっと」「どうしたら」と前向きに進もうとする気持ちがあるからこそ、先生はとても悩んでいたようです。
“うまくいかなかった”と感じることは、私自身も昔はよくありました。
でも“うまくいかなかった”とは、子どもは思っていないはずです。
先生側の準備ややり方で“失敗だった”と思うことがあれば、次回に改善していけばいいですし、
想定外の子どもの姿があったら、それはやってみて初めて知ることができる、実践の中からしか学べないことです。
先生方はこれまで子どもに怪我させることなく、
子どもたちの楽しみを支え、
計画も準備もバッチリやってきてくださいました。
そしていつも臨機応変に新しいことに挑戦してきてくださいました。
「もっと力抜いていいのか」
最後にそう言って笑顔を見せてくださったのは、本当に私自身もホッとして、嬉しかったです!
10ヶ月やってきて、子どもたちだけでなく、先生の成長の姿も見せていただいた気がしました。
私も、先生方と一緒に成長させてもらっています^^
園長先生の言葉も別記事で書きたいので、またブログをご覧ください。