いつもの道具と素材で積み重ねる経験【兵庫県 山水保育園様】

いつもの道具と素材で積み重ねる経験【兵庫県 山水保育園様】

今月、兵庫県の甲東山水保育園様では、日常的に楽しむ「基本の道具」をテーマに実践研修を行いました。
ハサミ、のり、クレヨンといった基本的な道具を使って、外遊びができない雨の日や毎日の自由遊び時間など、日常的に道具に親しむ機会をつくっていただくことを提案しました。

気軽に、日常的に取り入れていただくことをおすすめしたいこの活動は、子どもの成長を先生がいちばん実感し易い場面だと思っています。

なぜなら、日常の遊びの中で使う基本的な道具は、子どもにとって束縛なく自由に使えるものであり、子どもは思うように触れられる道具には積極的になり、どんどん使いこなしていくからです。

その意欲を支えるべく、先生が手助けしたり寄り添って遊ぶことで、子どもは気持ちが満たされ、遊びに没頭する時間もまた長くなっていきます。
それに、続けていくと造形活動に向かう子どもたちの姿がすごく変わります。

道具を楽しむには、素材も必要です。
この日はじゆうが帳をベースに、切ったり貼ったり、描いたりもする予定で、見本として幾つかの素材を私の方でご用意させていただきました。

ざっくり分けて8種類の色、かたち、手触りなどが異なる素材。
子どもにとって切る、貼るがしやすく、先生の準備が簡単な素材を選んでいます。
こんなふうにカラフルで見た目にも楽しい素材があると、子どもたちがワクワクしますよね。

この日、まずはでんぷんのりで「カラーのり」をつくるところからはじめました。

「月刊ひろば」2023年度7月号 カラーのり紹介

カラーのりの作り方は、今年度連載中の「月刊ひろば」でご紹介させていただいておりますので、ぜひお試しください。カラーのりならではの楽しいポイントがありますよ!

カラーのりができたら、続いてハサミに挑戦。
みんな慣れているようでじっくり楽しめていたので、しばらく子どもたちのペースで遊ぶ様子を見守る時間が続きました。

ふぅっと疲れるほどハサミに集中した後は、はじめにつくったカラーのりを使って、切った素材をペタペタ貼っていきます。
カラーのりは塗った部分が色づくので、素材をどこに置くといいのかや、置いたところに素材がくっつくことを子どもが理解しやすく、初めてのりを使う子どもにもオススメです。
アイデア次第でいろんな楽しみ方ができると思います。

じっくり遊ぶ“楽しさ”を体感した子どもたち

カラーのりの感触を楽しみながら、じゆうが帳のページ一面にたくさんの色を塗り広げた子がいました。
それが素敵な背景色となり、貼った素材が引き立っていました。

のりを塗るのもゴーカイだったけれど、さいごにはのりが見えなくなるほど素材を丁寧にいっぱい貼っていきましたが、ここまで遊び込む姿は珍しいのだとか。この日、その子の意外な姿を見ることができたと先生がおっしゃっていました。

もうひとりこちらの子は、みんなでシェアして使う容器まるごと素材を持っていき、全部ざぁーっとひっくり返していました。
友達が「あーっ!」と残念そうにしている横で、この子は大人の顔を見ながら「いひひっ」と悪気なくひっくり返すことを楽しんでいるようでした。

この子は遊び方を知らないようにも感じましたので、近くに寄り添い、カラーのりを「ぬりぬり」と塗ってあげ、そこにこの子の手で素材を「ぺたん」と貼ってもらえるように一緒に遊びに取り組みました。

「ぬりぬり」「ぺたん」と声かけを絶やさずに遊ぶと、嬉しそうな表情を見せ、次第に素材を1つ1つ選びながら使うようになっていきました。

「どれにしようか?」と聞くと、う〜ん、と考えてから選ぶようにもなってきて、だんだん楽しくなってきた様子。

じゆうが帳いっぱいに素材を貼り尽くし、「できた〜!」と満足そうに、先生に“見て見て”といっしょうけんめいアピールするほど嬉しかったようです!

こうして素材を使って遊ぶ面白さを子どもに伝えるのも、先生の大切な役割です。

子どものありのままの姿を見守るのが良いときもあれば、それ以上に遊びが深掘りできなかったり、広がっていかなかったり、ぐちゃっとなって思ったより早めにおしまいになったり、そんなときは、子どもが遊びの本当の面白さをまだ見つけられていないかも知れませんし、満たされていない何かがあるかも知れません。

こうして画用紙やじゆが帳の上で、限られたものを使って活動する中で、子どもたちは道具や素材とじっくり向き合い、面白さ楽しさを見出し、たくさんの経験を積み重ねています。

そして先生にとっては、一人ひとりの子どもと向き合い、その子について知る時間と考えていただければ、とても価値のある活動タイムになるのではないでしょうか。

先生と子どもが互いに気持ちに余裕を持って遊びに向かうために、先生が見守れる範囲の子どもの人数で活動することや、落ち着ける活動環境を工夫して、この時間を日常的に設定していただくことをおすすめします。ゆったりとしたとてもいい時間になります。


甲東山水保育園 様
https://www.sansui-hoikuen.jp/